相続時精算課税制度とは
相続時精算課税制度とは、原則60歳以上の父母又は祖父母から、18歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与(民法549条)した場合において選択できる贈与税の制度をいいます。まずは、この制度の根本である贈与税から説明します。
贈与税とは、人から財産を貰う贈与契約を締結した際発生する税金をいいます。また、自分が保険料を払っていない生命保険金を受け取ったとき(契約者≠被保険者≠保険金受取人)にも、財産を取得したとみなされて贈与税が発生します。
贈与税の算定方法は、2つあります。
1つ目は、暦年課税という方法です。
ある年の1月1日から12月31日まで貰った贈与額が基礎控除額の110万円を超える際には、その超えた額に税金がかかるという方法です。例えば、AさんがBさんから1年で200万円の贈与を受けたとしたら、200万円から110万円を差し引いた90万円に贈与税がかかることとなります。
贈与税の税率は、以下の通りです。
基礎控除後の課税価額 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1000万円以下 40% 125万円
1500万円以下 45% 175万円
3000万円以下 50% 250万円
3000万円超 55% 400万円
今回の例では、基礎控除後の課税価額は90万円であるため、税率は10%となり、
90万円×0.1=9万円
が贈与税となります。
上述した、暦年課税を適用されないためには、毎年の贈与額を110万円以下にしなければなりません。もっとも、祖父母や父母が成人した子供のために、自分の財産をあげておきたい、というケースは少なくありません。
そこで登場する2つ目の課税方法が、相続時精算課税制度です。
相続時精算課税制度とは、本制度を選択した年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与した額が2500万円を超える場合には、その超えた額について贈与税がかかります。
例えば、本制度を選択したCさんが、Dさんから3000万円の贈与を受けた場合、2500万円を差し引いた500万円に贈与税がかかることになります。
本制度が適用された際の贈与税率一律20%であるため、Cさんが納めなければならない贈与税額は、
500万円×0.2=100万円
となるでしょう。
この制度を利用する上で気を付けなければならないことは、この制度で贈与された財産額は、相続時に相続税として精算されるという点です。
例えば、1億円の財産を持っているEさん(70歳)がFさん(25歳)に対して相続時精算課税制度を利用して、2500万円の財産を贈与したとします。このとき、基礎控除額の2500万円を超えていないため、Fさんは贈与税を支払う必要がありません。
この話だけを聞くと税金の節約になったと考えられますが、実は、節約した分の税金は後々相続税として支払われることとなります。
人が亡くなったとき(民法822条)は、親族は亡くなった方の権利義務を承継(同法896条)することとなりますが、その際に、相続時に得た財産の額が一定以上になった際には、相続税が発生します。
上記の例では、EさんがFさんに対して贈与をした後に亡くなったとしたら、Eさんの手元にある財産は7500万円のみであるはずであり、その分に相続税がかかると考えるのが妥当のようにも思えます。
しかし、相続時精算課税制度は、相続税として精算される制度であるため、贈与された2500万円もEさんの財産とみなされることとなります。よって、Eさんには1億円の財産があったものとして相続税が計算されます。
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